シャーリィ・レイの一人語り

小説など、投稿しています。つまらないものですが、どうぞ。

つらつらと。入院生活

点滴の雫が規則正しく落ちる様子。
無機質さが際立つ天井のタイル。
何のためにここにいるのだろう。
ここには誰も訪れない。
いつまでここにいなければいけないのだろう。

ここは病院だ。しかし、私には病院というより留置場か牢獄のように感じられる。もちろんそれらよりは確実に居心地がいいと思うのだが。
この辺で勘違いする人が出てきそうだが、ここは普通の総合病院であり、精神病棟ではない。故にこうして携帯電話を持ち込めるのである。これだけでもだいぶマシだろう。何もないよりは断然退屈しのぎになる。

私は昨日の早朝に大量服薬して運ばれて、胃洗浄をされて、血液検査をされて、肺炎が見つかって、こうしてここにいるのである。とある人によると一週間ほどで退院できるそうだが、どうなのだろう。こんなところに一週間。長い。

大量服薬したことを私はとても後悔している。それは初めてではないし、何度もやっている。しかしまさかこんな展開に至るとは微塵も思っていなかったのである。
退屈は死に至る病とはよく言った言葉である。確かにそうだ。私はさっきから、点滴の針を如何に抜いて、窓から飛び降りようかなどと意味不明なことを考えているのだから。これが一週間続くだなんて考えたくもない。私の灰色の思考回路が死んでしまう。

さてさて、後悔 に話を戻そう。こうやって自分にとっても他人にとっても予想外なアクシデントを起こすと様々なところに影響が出る。
例えば学校。聞いた話だが学校から自宅へ何度も電話がきているらしい。
例えば勉強。資格の勉強をしなくてはならないのに。3月の最後の方には試験があるのだ。
例えば仕事。入っていたシフトを誰かに代わってもらわねばならないし何よりお金がないのに。
それに私の場合精神科への通院もあるのだ。今回の通院で私は診断書を書いてもらうはずだった。それも先送りだ。
自分はなんて馬鹿な行いをしたのだろうと、心から反省している。これも何かの試練なのだろうか。神様は何と思っていらっしゃるのだろうか。

退屈で、退屈で、退屈で、退屈だ。

天井のタイルを数えてみた。大きなタイルが24個だ。キリのいいのか悪いのか。まぁ、どうでもいいが。

あぁ、本当に、何の為に電解水の点滴など打っているのだろうか。おそらくは医療費を稼ぐためだろう。しかし断ることなどできはしないのだから。全くの馬鹿である。

窓の外で、車が通り過ぎる音がする。ドアの外で看護師が歩き回る音がする。

「失礼します」

ドアが開いて看護婦さんが入ってきた。

「お食事です」

「あ…はい、ありがとうございます」

「また来ます、失礼しました」

一連の会話。これだけ。トレイには札が立ててあって、"胃潰瘍食"と書いてあった。誰が胃潰瘍だ。私は肺炎だ。

そう言えば、昨日の記憶は酷く曖昧だな。たったあれだけの量の薬であんなになるとは思わなかった。後悔。ゴニョゴニョ。ゴニョゴニョ。後悔。
病人食って不味い。いや、不味いというか味がないというかとにかくそこまで箸の進む味ではない。まぁ量もそこまでではないので完食するが。

看護師が戻ってきた。

「全部食べたんですね、すごい!」

「…はぁ」

「調子はどうですか」

「まぁまぁです」

「寒くないですか」

「…大丈夫です」

看護婦さんはなにかカルテに書き付けた。そして軽く会釈して出て行った。

本当に、死ぬほど、やることがない。なんてことだろう。時間を持て余している。

まぁしかし…病人は療養に専念しろということだし、今日はもう大人しくすることにする。
明日の午後に主治医の診察があるらしいのでそこで退院できないか聞いてみよう…。



それでは。