シャーリィ・レイの一人語り

小説など、投稿しています。つまらないものですが、どうぞ。

【Claris】part1

昔々あるところに、由緒正しい貴族のご令嬢がいらっしゃいました。彼女の名前はクラリス・ローザベリー。あぁ、ええ、貴族の子ですから、ミドルネームは大変長いのです。ここでは省略致しますね。
さて、話を戻しましょう。
クラリスは、美しい少女でした。色素の薄い白金の髪、エメラルドの大きな瞳、白い肌。人形のように、それはそれは美しかったのです。その上、教養があり慎ましやかな性格をしていらっしゃいました。
彼女は一人娘であったため、欲しいものは何でも与えられ、何不自由なく暮らしておりました。


しかし、運命とは残酷なものです。悲劇は突然訪れました。
それはクラリスの16歳の誕生日のことでした。社交界デビューの日です。

その日は、名の知れた皇族や貴族が招待された盛大なダンスパーティーが催されていました。いつもは静かなお屋敷にたくさんの人が集まっています。その中でも美しいクラリスはとても目を引きます。彼女はモスリンのフリルをあしらった豪奢なエメラルドグリーンのドレスを着ておりました。彼女の瞳にぴったりの色です。

クラリス。あなたは今日から小さな少女ではなく、ローザベリー家を背負う一人の女性として生きるのですよ。自覚を持ってくださいね」

彼女の母オフィリアは言いました。

「えぇ。心得ております、お母様」   

クラリスは深く頷いた。

「心配しないで。あなたはとてもよくやっていますわ」

オフィリアは聖母のような笑みを見せて、白い清楚なドレスの裾を美しくなびかせながら夫の元へ戻った。

その後クラリスは伯爵家の息子とワルツを踊ったり、ご友人と談笑したり、楽しそうに過ごされていました。


突然のことです。会場の灯りが一瞬にして消えてしまいました。辺りは真っ暗闇です。

「まぁ!」

「な、なんだ!?」

「停電かしら」

「いたっ…足を踏まれたわ」

「これは失礼」

人々は我も忘れて口々に言いました。
クラリスも思わずキョロキョロと辺りを見回しましたが、何しろ明かり一つないので、何も見えません。

次の瞬間――
パーン パーン パーン と鋭い銃声が3発、広い会場に響き渡りました。それから、ドサッ何かが崩れ落ちるような音。
辺りは一瞬、静まり返ります。
そして消えたときと同じくらい突然に、灯りがパッと戻りました。

「な、な、なんてこと!」 

クラリスは恐怖のあまり気を失いそうになりました。自分とついさっきまで話していた友達が、目の前に倒れているのですから。しかも銃弾に頭を撃ち抜かれて。
彼女は後ずさりました。怖くて怖くて、すぐにこの場から逃げ出したいくらいでした。会場にいた人々も大混乱です。いち早く会場から出ていこうとする人もいました。
何故なら、撃たれていたのはクラリスのご友人だけではなかったからです。

「ローザベリー伯爵とご夫人が…っ」

ローザベリー家の執事の声です。クラリスはパッと声のした方を振り返りました。

俯せに倒れた金髪の男性―――床には大量の血が――、胸元から深紅に染まってしまった白いドレスの女性…
遠くからでも一目で分かります。それは紛れもなく彼女の父と母の変わり果てた姿でした。

「そん、な…おかあ、さま…――」

目眩がして、目の前が真っ暗になりました。そして可哀想なクラリス・ローザベリー嬢は、ショックでその場に崩れ落ち、気を失ってしまいました。


さぁ、悲劇の物語はここから始まります。
寄ってらっしゃい見てらっしゃい、可哀想な少女の物語!


――to be continued